理由なんてなかった。
他の連中と同じ。
アイツが、九尾の器だから。
憎いから憎い。
だから、生きてるだけで気に食わない。
殺す事はできないから、せめて何かしらのダメージを与えてやろうって思った。
そんな単純な事。
だから、下忍を担当するって話が来た時も、たまたまアイツのいる7班を受け持つ事になった時も、いい機会だなって思っただけ。
九尾の器――うずまきナルトは、生まれた時から里の人間みんなに憎まれて、愛情に飢えて育ったと聞いた。
それを聞いても、同情なんてする気にならなかった。
九尾のせいで家族を失った人間は大勢いるんだ。
その罪がどれだけのものなのか、知ればいい。
九尾の器として捧げられた運命を恨めばいい。
そんなアイツに、愛情を与えてやればどんな反応をするんだろう。
それをこっぴどく裏切ってやれば、どんな顔で傷つくんだろう。
考えるとけっこう楽しかった。
わざとらしくスキンシップをとって、毎日家を覗いて。
そうやって俺を信用させて。
俺を信用しきった頃に“好きだよ”って言ってやろう。
そしたらお前は何て言うだろうね。
嬉しそうな顔して“俺も大好きだってばよ!”なんて言うのかね。
その後に冷たい目を向けて“俺が九尾のガキなんて好きになる訳ないでしょ”なんて言ったら、どんな顔するかな。
今から楽しみだよ。
「ナルト〜」
任務を終えて解散した後、すぐにナルトを呼び止める。
ほんとはコイツの名前なんて、呼びたくもないけどね?
なんて思ってると、いつも通り元気な笑顔で振り向いた。
「何だってばよ?」
「今から、ナルトのとこ行っていい?」
俺が訊くと。
ナルトは少し考え込んだ。
さっさとうなずきなよ。
どうせお前の家に行く奴なんて、俺かイルカ先生くらいのもんでしょ。
「うん、いいってばよ」
俺が苛々していると、ナルトは顔をあげてうなずいた。
ほらね。
「じゃあ決まり」
俺は嫌悪感を我慢してナルトの手を握る。
ほんとは、気分が悪い。
腹に九尾を抱えてる奴の手を握るなんてさ。
それでもまあここは我慢かな。
こんな事で気付かれたら全部が水の泡だしね。
そしてナルトの家に向かって歩きだした。
この後の展開を予想して、俺の顔にはつい笑みが浮かぶ。
「カカシ先生、どうしたってばよ?」
「ん?」
「何か嬉しそうだってばよ」
「そりゃ、これからナルトん家に行くからデショ」
首を傾げて俺を見上げるナルトににっこり笑ってやると。
ナルトは照れたのか顔を背けた。
さて。
どんな言葉で裏切ってやろうかな?
家に入った途端、俺はナルトを背中から抱き締めた。
ナルトの体が一瞬固まる。
「先生?どうしたってばよ?」
「あのさあナルト。俺ね、ナルトの事、好きなの」
熱っぽい声で、耳元で囁いてみた。
さあ、どんな反応するかな?
「先生?本気で言ってるのかよ?」
ナルトは目を丸くして振り向いた。
信じられないって顔。
俺はにっこり笑って見せる。
「好きだよ?」
質問には答えない。
ナルトはうつむいた。
さあ早く言いなよ。
笑顔で裏切ってやるからさ?
そして顔をあげたナルトは俺の予想通り、満面の笑顔で。
「俺も大好きだってばよ!」
そう言った。
だから俺はナルトの首に手をかけた。
片手でも充分足りる細い首を絞め上げる。
ナルトの目が驚愕に見開かれた。
「俺が九尾のガキなんか好きになる訳ないデショ?殺すよ?」
殺気をぶつけながらそう言って、にっこり笑ってやった。
手を離すと、ナルトは軽く咳をする。
そして、あからさまに傷ついた顔で俺を見つめた。
ああ、その顔だよ。
その傷ついた顔が見たかったんだ。
ざまあ見ろって感じ?
俺は冷たい目でナルトを見つめる。
「……なんてね」
ナルトが小さな声で何か言った。
俺が首を傾げると。
ナルトは急に笑い出す。
どうしてそんな反応をするのか、理解できなかった。
ここは大好きな先生に裏切られて、傷ついて泣くとこでしょ?
なのにどうして笑ってんの。
「何がおかしい?」
俺が殺気を込めて訊くと。
ナルトはようやく笑いを引っ込めた。
「何って、カカシ先生の反応だってばよ。あいつの言った通りだったからさ、思わず笑っちゃったってばよ」
そしてそう言って目じりに溜まった涙を拭う。
あいつ?
誰、あいつって?
そんな俺の疑問をよそに、ナルトは俺を睨んできた。
いつものナルトからは想像もできない冷たい眼差しに、俺は思わず目を見開いた。
「先生が俺を憎んでる事くらい知ってたってばよ?」
「!!」
俺は更に目を見開いた。
「わざと優しくして、裏切るつもりだったって事もね。信用させて告白でもしてくんのかなーとか思ってたら本当に告白してくるしさ」
「気付いて、たのか……?」
「あったり前じゃん。アレだけ憎しみ込めた目で見られれば馬鹿でも気付くって。そういう先生は、俺の演技に気付いてなかったみたいだけどさ?」
俺の驚きをよそに、ナルトはのん気に頭の後ろで腕を組んだ。
絶対に悟られる訳がないって思ってたのに、どうして気付いたんだろう。
これでも俺、上忍なんだけど。
自分の感情を抑えるなんて造作もないんだけど。
どうして一介の下忍、しかもドベのナルトに気付かれちゃう訳?
それに、どうしてナルトの演技に気付けなかった?
相手の感情を読むのなんて得意な筈なのに。
「残念だったな、先生。俺の傷つく顔が見たかったんだろ?でもさ、先生には何言われたって傷ついたりしねーってばよ」
「?」
「だって、俺にとってカカシ先生なんて、里の奴らと同じだもん。どうでもいい奴に憎まれたって裏切られたって、全然何ともねーからさ」
ナルトはそう言って、顔を歪めて笑う。
だけどその笑顔は、傷ついたような、諦めにも似たような笑顔だった。
その時やっと、俺は自分の犯した過ちに気付いた。
もしかしてナルトは、俺の憎しみに気付きながら、それでも俺を信じようとしてくれてたんじゃないか?
こんな展開を予想しながら、それでも俺を信じようと。
だけどやっぱり予想通りの展開に、信じる事を諦めた?
「ナルト、俺は……」
何を言えばいいのかわからないまま口を開く。
その時、玄関で気配がした。
ナルトがそれに気付いて玄関の戸を開ける。
そこに立っていたのは。
「シカマル?どうしたってばよ」
ナルトが首を傾げると。
シカマルは俺を見て頭をかいた。
「もしかして、取り込み中だったか?」
「ん、もう済んだってばよ」
「そうか」
「それで、何の用?」
「あー……任務の事なんだが、ここで言っていいか?」
シカマルは俺の事を気にしつつ、ナルトに訊く。
任務?
10班との合同任務なんて聞いてないけど。
俺の疑問をよそに、ナルトは俺をちらりと見た後、シカマルに向き直った。
「構わないってばよ」
「ならいいけどよ。実はさっき連絡があってな、今夜、これから任務だとよ」
「うっわ、マジかよ?」
シカマルの言葉に、ナルトが眉をしかめる。
こいつら、何の話をしてんの?
今夜の任務って?
俺がそんな事を思ってる間に、ナルトは着替えを始めた。
いつも任務で着ているオレンジの服を脱ぎ。
着替えたのは、俺がかつて着ていた服と同じものだった。
暗部だけが着る事を許された服。
その服に着替えたナルトの左上腕には、炎を象った刺青。
間違いなく暗部の刺青だ。
「暗部……?」
「そうだよ?俺ってば九尾の器じゃん?九尾のチャクラ、有効利用してるってばよ。まあ、里のためじゃなくってじっちゃんのためだけどさ。今の木の葉なんて、守る価値もなさそうだし。早く火影になって、俺を憎む奴のいない里にしたいってばよ」
ナルトはそう言って、狐の面を頭の上にのせた。
気付くと、シカマルも同じ格好になっている。
2人とも暗部……なのか?
「俺の事殺したいならさ、死ぬ気でかかってこないと殺せないってばよ?じゃあな、先生。明日は遅刻すんなってばよ」
ナルトはそう言ってくすりと笑うと、シカマルとともに消えた。
その笑みはやっぱり、どこか諦めたような笑みに見えた。
急いで気配を追ってみたけど、もうナルトの気配は微塵も感じなかった。
カカシ先生が他の上忍の連中と話してるのを聞いて、やっぱりなって思った。
『何々?お前あの九尾のガキが好きな訳?』
『本当か?物好きだな〜』
『んな訳ないでしょ。優しくして俺の事信じさせて、こっぴどく裏切ったらどんな反応するかなって思ってサ。試してる最中なんだよ』
まあ、憎まれてるかなーとは思ってたけど。
わざとらしいスキンシップも、毎日俺ん家に来るのも、全ては俺を信じさせるための演技。
そのうち先生は俺に告白とかしてくるんだろう。
それで俺が“俺も大好きだってばよ!”なんて言ったら。
冷たい視線を向けて“俺が九尾のガキを好きになる訳ないでしょ?”なんて言って嘲笑するんだ。
それで傷ついた俺を見て、更に笑うんだろ?
先生の魂胆なんてお見通しだってばよ。
何だ、結局先生も里の奴らと同じって事か。
ちょっとは……ほんとにちょっとだけだけど、信じていたかったんだけどな。
やっぱり、俺の味方はじっちゃんとイルカ先生と、あいつらだけ。
ま、それだけいれば十分だけどさ?
それに、もう疲れたってばよ。
ドベで健気なナルトを演じてればそのうち……って思ったけど。
その可能性は限りなくゼロに近いってわかっちゃったし。
だから、早く本性見せてくんねー?
そしたら俺も自分の本性見せて、心置きなく任務できるしさ。
先生が告白してきたら、どんな反応してやろうかな。
満面の笑顔でも見せて“俺も大好きだってばよ!”って言おうか。
それとも冷めた顔で“嘘つくな”って言おうか。
ああそうだ。
あいつにも話してみよう。
そして俺は、暗部の任務でいつも組んでいるあいつ……シカマルの元に向かった。
次の日、ナルトに謝った。
もちろん謝って済むような事じゃないし、許されるなんて思ってないけど、それでも謝らずにはいられなかったから。
ナルトは謝った俺を見て、悲しげに笑うだけだった。
許すとも、許さないとも言わず。
ただ悲しげな笑みを浮かべて俺を見つめる。
それだけだった。
許す、許さないではなくて。
きっと、もう。
その時のナルトの言葉が俺の胸を締め付けていた。
『じっちゃんが言ったんだ。里の皆を恨まないでやってくれって。九尾の器の俺に憎しみをぶつけなきゃ、悲しみから立ち直れない可哀想な人たちなんだって。先生も、そうなんだろ?里の奴らと同じ、可哀想な人なんだろ』
だからもう、いいってばよ。
殺されてなんかやらねーけど、憎みたいなら好きにすれば?
そう言ってナルトは、やっぱり諦めたような笑みを浮かべた。
何も言えなかった。
本当に、その通りだったから。
大切な先生と親友を失った悲しみを、九尾の器であるナルトを憎む事で癒そうとしていたんだから。
器のナルトには何の罪もないのに。
そんな事、わかりきっていた筈なのに。
ナルトから見れば俺も里の連中と同じ。
事あるごとにナルトに危害を加えていた、里の連中と。
だけど、もうあんな事しないから。
許されるとは思わないけど、それでも。
許して欲しい。
許されたいよ。
ナルトだから。
他でもない、ナルトだから。
今更、後悔したって遅いんだけどね。
あれ以来、ナルトはまともに話してくれなくなった。
今まで通り、表向きの態度は変わらないけど。
俺も、これまで通りに話しかける事ができなくなってた。
おそらくナルトは、もう俺の事を完全に信じてないから。
上辺だけだって知りつつ、それでも信じようとしてくれていたのはもう過去の話。
ナルトにとって俺は里の連中と同じ。
信じないし、期待もしないし、受け入れる事もない。
これが、俺の犯した過ちに対する報いなのかも知れない。
俺の実力がカカシ先生にばれてからは、全てが楽だった。
楽しくなんかなかったけど、楽だった。
信じてないし、信じてくれてない関係。
期待しないし、期待されない関係。
楽だった。
下忍の任務は退屈だけど、それでもけっこう楽しい。
ドベのフリしてサスケに馬鹿にされてやるのは退屈しのぎになるし。
サクラちゃんに寄っていってつれない態度であしらわれるのも面白い。
暗部の任務は充実しててやりがいがある。
それでも、悲しい。
どうしてだろう。楽だけど悲しいんだってばよ。
やっぱりちょっとは傷ついてたって事かな。
でも、大丈夫。
俺には大切な仲間がいるから。
ちゃんと俺の事を信じてくれてて、仲間だと思ってくれてるあいつらがいるから。
それでいいと思った。
もうカカシ先生の事は信じない。
期待しない。
俺にとってはもう、どうでもいい存在。
それでも、そう思う事に空しさを感じたりしてる。
そんな空しさを感じてた、ある日。
カカシ先生に上忍の任務が入って、下忍の任務が3日ほど休みになった。
初日はサスケに誘われて修行をした。
まだ本当の俺の足元にも及ばないけど、やっぱセンスはいい。
性格はクールでむかつくけど。
でも、イタチほど変わり者じゃないってばよ。
イタチはかなり変わり者だった。
まさかサスケ以外の一族を皆殺しにして里抜けするとは思わなかったけどさ。
2日目は、天気が良かったから部屋の掃除をした。
俺の部屋、休みになるとあいつらの溜まり場にされるから。
あいつらの私物がけっこうあってごちゃごちゃしてるんだ。
それらを整理して、掃除をした。
布団も干して、シーツは洗濯して。
そうこうしてる内に1日が過ぎていった。
夜中にあいつらが来て、これから任務だとか言ってコーヒーだけ飲んで出て行った。
どうやら俺以外の奴らはそれぞれ単独任務が入ったらしい。
俺だけ待機。
暗部メンバー全員を里外任務に就ける事はない。
何かあった時のために、必ず1名は応援要員として待機する。
今回は俺が応援要員として待機する事になったみたいだ。
まあいいけどさ。
明日は何すっかなー。
あいつらきっと疲れて帰ってくるだろうから、何か美味いもん作って待っててやるか。
よし決まり。
明日は買い出しに行こう。
俺は料理のメニューを考えながら布団に入った。
久々の上忍の任務はちょっと辛かった。
本来なら暗部がするようなSランクの暗殺任務。
だけど暗部は今任務に就けるメンバーがいないとかで。
かといって暗部経験のない上忍では心もとないって事で、暗部経験のある俺に回って来たって訳。
ナルトとシカマルはどうなんだ、って火影様に言ったら、驚いてたな。
『シカマルは明日から別の任務が入っておる。応援要員として待機しているのはナルトだけだ。ナルトがお前の応援に行ってくれるとは思えなんだが、一応、要請はしておこう』
そう言って目を細めた火影様は、ナルトが俺をどう思っているのか、俺がナルトをどう思っていたのか、全部知ってるに違いなかった。
応援は望めないって事。
でもまあ、何とかなるだろうと思って任務を受けた。
それが失敗だったと気付くのはすぐだったんだけど。
暗殺対象は火の国にいた。
裏でかなりあくどい事をしてるらしくて、だけど証拠を掴めずにいた大名が依頼してきたという事だった。
片道1日。
2日目で暗殺には成功したものの、折り返しの3日目、追っ手の数がかなり多かった。
護衛の連中はほとんどが抜け忍で、しかも上忍クラスの奴らばかり。
ボスが死んだのにどうして追ってくるのか疑問だったけど、どうやら色々と複雑な裏事情があるらしい。
簡単に言うとボスを殺した俺を捕まえて、ボスのボスに引き渡せば賞金ががっぽり入るとか、そういう事。
とんだ暗殺任務だな。
どうせならその、ボスのボスを暗殺って依頼にしてくれれば良かったのにさ。
とりあえず暗殺はできたんだし、木の葉の里まで逃げ切ればどうにかなるだろう。
追っ手を振り払いながら、そんな事を考えていた。
とにかく、死ぬのだけはゴメンだった。
ナルトに心を残したまま、死ねない。
そりゃあナルトはもう俺の事なんてどうでもいい存在なんだろうけど。
それでも、俺にとっては。
だから、死ねない。
ナルトを傷つけた罪滅ぼしもできてない。
絶対に死ぬ訳にはいかなかった。
「全く、しつこい連中だね」
写輪眼をフル稼働させて、連中の術を相殺していく。
隙をついて止めを刺す。
一体、何人いるんだ?
いい加減スタミナが切れてきたぞ……。
早い事決着をつけなきゃやばい。
でもこんな状況じゃ雷切も使えない。
ほんのわずかだけど、油断してしまったらしい。
右腕に鋭い痛みが走った。
痛さからして毒は塗られていないようだったけど、動きが鈍ってしまった。
気付くと、目の前に刀の切っ先が迫っていた。
ああ、やっぱりここで死ぬのか。
そう思いながら鋭く光る先端を見つめていると。
「!?」
鮮やかな金色がそれを遮った。
暗部の装束に身を包んで、狐の面を被っている。
小柄で、金色の髪のそいつは、刀と俺の間に滑り込んでいた。
体に合わせた小振りの忍刀を構えて、相手の刀を遮っている。
驚いて相手が油断した隙に、そいつは止めを刺していた。
「ナルト……?」
俺は思わずつぶやいていた。
絶対に応援に来る筈がないと思っていた。
それなのにどうして?
気配はほとんど感じさせないけど、間違いなくナルトだろう。
俺の疑問をよそに、そいつは残った敵をひとりで片付けてしまった。
目にも留まらぬ素早さと、返り血ひとつ浴びない華麗さで。
我に返った時には、俺とそいつの周りには死体、死体、死体。
「終わったよ」
仮面を外さないまま、そいつが言う。
くぐもってはいたけど、間違いなくナルトの声。
「応援、感謝する。助かったよ、ナルト」
俺は精一杯の気持ちを込めてそう言った。
応援に来てくれたって事は。
少しは望みがあると思っていいんだろうか。
もう裏切らないから。
誓うから。
期待させてくれないか。
ナルトはしばらく黙っていた。
そしてゆっくりと面を外す。
幼い顔が露になった。
「礼はいらない。火影様の命令に従っただけだ」
ナルトは無表情な顔で俺を見て、暗部らしい口調でそう言う。
「……ありがとう」
それでも俺は、感謝の意を述べた。
ナルトは微かに戸惑いを浮かべたけど。
「俺はただの応援だから、後始末と報告は任せる。それと……明日の任務、遅刻すんなってばよ?」
そう言ったナルトの顔には。
寂しげな笑みでも、諦めた笑みでもなく。
普段のナルトに近い、それでいてちょっとだけ鋭い笑みが浮かんでいた。
期待、してもいいって事?
もう一度、俺を信じてくれるって事?
ナルトの真意はわからないけど。
その場に立ち尽くす俺は、この時凄く嬉しそうな笑みを浮かべていたと思う。
まだ、時間はかかるだろうけど。
ゆっくり、じっくり、罪滅ぼしをして。
信じてもらえるように努力するから。
それまで、待ってて。
終。