「賭け」


 いつものようにDランクの任務を終えた7班は、担当上忍カカシの声で解散となった。
 サスケはさっさと帰路につき、サクラは急いでそれを追う。
 そしてナルトも元気良く皆に別れを告げて帰る、というのがいつものパターンだった。
 しかし今日は少し違う。
 ナルトはカカシに向き直ると、まっすぐにカカシを見上げた。
「どうした?帰らないの?」
「あのさあ先生」
「何?」
「先生ってば、俺の事、どう思ってる?」
「はぁ?」
 ナルトの予期せぬ言葉に、カカシは目を丸くする。
 見つめてくるナルトの目は真剣だ。
 それを見てカカシは一瞬だけ苦しそうに目を細めると。
「そうだねぇ。顔を見るのも、声を聞くのも苦痛だね」
 低い声で一言そう言った。
 ナルトの目が驚きに見開かれ、次の瞬間には悲痛な表情に変わる。
 すぐに涙が浮かんできて、今にも零れ落ちそうだった。
「じゃあね」
 そんなナルトの顔を見ないようにして、カカシはゆっくりと歩き出す。
 ナルトは追いかけて来ようとはしなかったが。
「それって、俺の事、嫌いって事?」
 泣きそうな声が背中に届く。
 カカシは一瞬立ち止まったが、振り向きもせず、返事もしないで再び歩き出した。

「苦痛って、どういう事だってばよ……」
 ベッドの上で仰向けになったまま天井を眺める。
 カカシの言葉は、ナルトの胸に深く突き刺さった。
 拒絶の言葉なんて慣れている筈なのに。
 それでもカカシは自分の担当教官だし、他の大人たちとは違うと思っていた。
 慕っても拒絶されなかったから、気にかけてくれていると思っていたのに。
 “顔を見るのも、声を聞くのも苦痛だね”
 そう言ってナルトを見たカカシの目には、何の感情も浮かんではいなかった。
 憎悪や拒絶の色こそなかったものの、いつもの穏やかな眼差しでない事は確かだ。
「どうしたらいいんだってばよ……」
 ナルトはぐっと涙をこらえると、ベッドから起き出した。
 行くあてはないのだが、家でじっとしているのも嫌だったので出かける事にした。
 かと言って街を歩くのも躊躇われ、結局いつも修行している森に向かう。

 森に到着したものの修行する気にはなれず、大きな木の根元にころんと転がった。
 ナルトは、カカシの事が大好きだった。
 それが、最近のカカシはナルトの目を見て話をしてくれない。
 それどころか、必要最小限の会話しかしてくれなくなった。
 いつもなら任務でミスしなかった時は頭を撫でてくれたのに、近付くと不自然に見えない程度にかわされる。
 もしかしたら嫌われているかも、とは思っていたが。
 はっきり嫌いだと言われたならそれなりに諦めもつくのに、苦痛だと言われてもどうしていいかわからない。
「ほんと、どうしたらいいのかわかんねー」
 つぶやく声が震える。
 カカシの言いたい事はわかった。
 要するに、嫌いという事だろう。
 でも、頭ではわかっても、自分の気持ちはどうにもならない。
 あんな事を言われてもカカシの事は好きだった。
 でも、好きな人に苦痛を与えるのは嫌だ。
 こういう時、どうしたらいいのだろう。
 どうでもいい大人たちから拒絶されるのは慣れているし何とも思わないのに、大好きな人から拒絶されたらどうしていいのかわからない。
 夕日で赤く染まった空が滲んで見える。
 誰かに訊けば答えが見付かるだろうか。
 頭に浮かんだのはアカデミー時代の担任イルカの顔。
 ナルトは起き上がると、すぐに涙を拭って走り出した。

 イルカの家の前で待っていると、程なくイルカが帰って来た。
「ん?ナルトじゃないか。どうした?」
「イルカせんせ〜〜〜っ」
 ナルトは涙を浮かべてイルカに抱きつく。
「お、おいっ?」
 イルカは焦ってあたふたとするが、ナルトは離れてくれなかった。
「先生、大事な話がある」
「大事な話?」
「うん」
「そうか。それじゃお茶でもいれるから中に入って」
 真剣な眼差しのナルトを見てただ事ではないと感じたイルカは、そう言ってナルトを中に促す。
 するとナルトはイルカから離れて、素直に中に入った。
 居間に案内されて、テーブルにはイルカの用意したお茶が置かれる。
「で、大事な話ってのは何だ?」
「あのさ。俺、すっげー好きな人がいるんだってばよ」
「へえ」
 ナルトの言葉に、イルカは内心驚きつつも微笑を浮かべた。
 同じ7班のサクラに憧れているようだから、サクラの事かなと思う。
「告白したワケじゃないんだけどさ、俺の事どう思うか訊いてみたんだ」
「そうか。それで、相手は何て?」
 サクラはサスケラブだからどうせ振られたんだろうな、などと思いながら先を促すと。
「……苦痛だって」
 泣きそうな顔で、ナルトはそう言った。
「え?」
 信じられない言葉に、イルカはどう反応していいかわからない。
「顔を見るのも、声を聞くのも苦痛だ、って言われたってばよ」
「苦痛って……」
 ある意味、はっきり“嫌い”と言われるよりも酷いんじゃないか。
 思わず口に出しそうになった言葉を飲み込んで、イルカは目の前のナルトを見つめた。
 サクラがそんな事を言うとは思えない。
 となると、ナルトの好きな人物は別の誰かという事になる。
 ナルトが気を許している人間はごくわずかだ。
 そんな中でもナルトが特に懐いているのは三代目火影と自分と、現上司である上忍。
 その他にも友達と呼んでも差し支えない面々はいるが、ナルトは彼らに対して友達以上の感情では接していない筈だ。
 ナルトが“大好き”という感情を持ちそうな人物は限られている。
 そして、その限られた人物の中にこんな事を言いそうな人物がいただろうか。
 そう考えた時、眠たげな目をした覆面の上忍がイルカの脳裏に浮かんだ。
 彼の請け負った“任務”の事は火影から聞いている。
 九尾の器であるナルトの監視と護衛。
 もしも九尾の封印が解けた時、九尾を抑える事ができるだろう忍は彼だけである、という事でこの任務に抜擢されたという話だ。
 どういう心境でその役を引き受けたのかはわからない。
 カカシは、ナルトを憎んでいるのだろうか。
 確かに、頭ではナルト自身が九尾ではないとわかっていても、ナルトに憎しみを向ける人間は多い。
 ナルトはただ器にされただけで、九尾の罪はナルトの罪ではない。
 それをしっかりと理解できる人間だからこそ、ナルトの監視役に任命されたのではないのか。
 イルカの見た限りではカカシがナルトを嫌っているようには見えなかった。
 ならば、ナルトの言う相手はカカシではないのだろうか。
 だがどう考えてもカカシしか浮かばない。
「顔を見るのも声を聞くのも苦痛って、顔も見たくないし声も聞きたくないくらい嫌いって事じゃん?」
「ナルト……」
「俺、色々考えてみたけど、答えはひとつしか出ないってばよ」
「答え?」
 涙を堪えながらそう言うナルトを見て、イルカは嫌な予感がした。
 そしてナルトの出した“答え”とは。

 翌日。
 7班は今日もDランクの任務があった。
 しかし、いつもなら集合時間より早く来ている筈のナルトが来ない。
 サクラが来てサスケが来て、2時間後にカカシが来ても、ナルトは来なかった。
「全くどうしたのよナルト!」
 怒りながら心配そうな顔をするという器用なサクラ。
「どうせ寝坊でもしてるんだろ」
 舌打ちしながらも、やはり心配そうな顔のサスケ。
「ま、ナルトの事だからそんなとこでしょ。今日の任務の場所、先行っててくれる?俺はナルトの家まで行ってみるから」
 カカシはそんな2人にそう言って地図の書かれた紙を渡した。
 サクラもサスケもナルトを気にしつつ、言われた通りにする。
 2人が出発したのを確認してから、カカシは音もなく姿を消した。

 サクラたちと別れて5分後には、カカシはナルトの住むアパートの前に着いていた。
 中からナルトの気配は感じられない。
 入れ違いだったかと、カカシは頭をかきながらその場を後にした。
 昨夜は確かに帰って来たのを確認したし、眠るのも確認したから、朝になってから出かけたのは間違いない。
「やっぱりあの言葉はきつかったかな」
 ぼそりとつぶやく。
 ナルトの顔を正視する事ができずに背を向けてしまったけれど、おそらくナルトは泣きそうな顔になっていただろう。
 昨夜は遅くまで出かけていたようだが、もしかしたらいつも修行している森で泣いていたのかも知れないと思った。
「やっぱ傷ついたか……」
 ここにいても仕方ないので、気は重いが現場に向かう。
 しかし、途中で重要な事に気付いた。
 ナルトは今日の任務の内容も場所も知らないのだ。
 入れ違いになったところで、現場には行けない筈だ。
 待ち合わせの場所で待ちぼうけしているだろう。

 しかし。
 待ち合わせの場所にナルトの姿はなかった。
 任務に行ったとは思えない。
「サボリか……」
 ま、仕方ないか、と頭をかく。
 とりあえず心当たりを探す事にした。
 サボリの理由は見当がつく。
 昨日の今日で、カカシと顔を合わせるのが辛いのだろう。
 おそらくナルトは、誰にも見付からないような場所にいるに違いない。
 どこから探そうかと考えていると、良く知った気配が近付いて来た。
 ナルトの元担任であるイルカだ。
 カカシはその姿を見てわずかに目を細める。
 こういう時、あまり会いたくない人物の1人だったりする。
「イルカ先生じゃないですか。どうしました?」
「ちょっと大事なお話が」
 イルカは真剣な顔でカカシを見つめた。
「……ナルトの事ですか?」
「どうしてそれを?」
「いや、何となく」
「そうですか。それでそのナルトですが、今日来てますか?」
「来てないんです。家にもいないようで。イルカ先生、ご存知ですか?」
「昨夜、ナルトがうちに来たんですよ」
 イルカが低い声で言う。
 その言葉に、カカシはわずかに反応した。
「……それで?」
 昨夜帰りが遅かったのはこの中忍の所に行っていたからか。
 そんな事を思いながらイルカを見つめる。
「泣いてました。大好きな人に、顔を見るのも声を聞くのも苦痛だと言われてどうしていいかわからない。いくら考えても答えはひとつしか出ない、と言って」
 ナルトの大好きな人物がカカシであると知っているかのように、イルカの眼差しは鋭いものだった。
 カカシは何も言えず、ただイルカの言葉に目を瞠る。
 ナルトは一体どんな答えを出したのか。
 イルカの様子からすると、かなり深刻な気がする。
「それで、ナルトが今日どこにいるのか知りませんか?」
「わかりません」
 イルカは目を細めてそう言った。
「答えって一体何なんです?」
「……自らの死、ですよ」
「まさか!」
「自分がこの世に存在する限り大好きな人に苦痛を与えてしまう。だから、自分が死ねば大好きな人に苦痛を与えなくて済むからと」
「死ぬなんて!イルカ先生は止めなかったんですか!?」
 カカシは思わず声を張り上げていた。
 いつも飄々としているカカシらしくない剣幕。
「止めない訳ないでしょう……」
 イルカは悲痛な顔でカカシを見る。
 まるでカカシを責めているような目だった。
 しかしその顔をまともに見る事はないまま、カカシは姿を消していた。
 ナルトを探すのだろう。
 カカシの気配が消えたのを確認して、イルカは大きなため息をついた。

 ナルトの気配を探りながら、演習場や森を駆ける。
 しかしどこにもナルトはいなかった。
 普段まともに気配を消す事なんてできないくせに、こういう時はどうして上手に気配を断てるのかと不思議になる。
 気配を感じないのはもしかしたら。
 最悪の事態を予想して焦る。
「一体どこに行ってんのよ……」
 自分の蒔いた種ではあるが、今はそんな事を考えている場合ではない。
 ナルトが向かう場所。
 それは死に場所でもあるのだ。
 今ナルトを死なせる訳にはいかなかった。
 このままナルトを死なせてしまったら、自分の本心が報われないではないか。
 あんな事を言ったのにはちゃんと理由があるのだ。
 本当なら、ナルトには知られたくなかった理由が。
 ナルトの将来を考えてした事だったのに。
 考えが甘かった。
 ナルトの性格からして、言葉の裏を読むのが苦手だという事を失念していた。
 あの言葉をあのまま捉えて、ナルトはこんな答えを弾き出してしまったに違いない。
 真意を知らないままナルトに死なれたら自分の苦悩は水の泡になり、ナルトの未来が失せてしまう。
 それだけはどうしても避けたかった。
「洒落になんないデショ」
 つぶやくカカシの胸を後悔の2文字が締め付ける。
 しかし胸を痛める時間すら惜しむかのように、その姿は消えた。

 カカシが必死で探し回っているとは知らず、ナルトは買い物を済ませた後、すぐに家に帰って来ていた。
「イルカ先生はああ言ったけど……ちょっと信じられないってばよ」
 テーブルに着くと、ナルトは腕組みをして考え込んだ。
 テーブルの上には今買って来た白紙の巻物と、筆。
「イショってどういう字だったっけ……」
 考えてみてもわかる訳がない。
 とりあえず筆に墨を付け、カタカナで書いてみた。
 そして再び考え込む。
「何書けばいいのかわかんないってばよ……」
 死ぬ前に伝えたい事を書き残しなさい。
 イルカはそう言った。
 大事な人、大切な仲間、大好きな人に、まだ伝えてない言葉や伝えておきたかった言葉を、全て書き残しなさい。
 それができたら……。
 その先は何も言わなかったけれど。
 それができたら、死んでもいい。
 きっとそう言いたかったんだろう。
 だから、きちんと書かなければ。
 死ぬ前に伝えたい事。
 意を決して、ナルトは巻物に書き込み始めた。
―イルカ先生へ。
 俺が死んだら、植物の世話よろしくお願いします。
 いつもラーメン奢ってくれてありがとう。
 俺の事、認めてくれてありがとう。
 嬉しかったってばよ―
「あとは……サクラちゃんとサスケに書いて、と」
 つぶやきながら、同じ班の仲間にもメッセージを残す。
 そして他の班の下忍仲間や担当の上忍、火影、木の葉丸、エビス、タズナ、イナリ、一楽の主人。
 とにかく知っている人物全てにメッセージを書いた。
 巻物はほとんど書き埋まり、残すはあと数行分のスペース。
「やっぱ、書かなきゃ……」
―カカシ先生へ。
 先生の事が、大好きでした―
「これでよし!」
 ようやく書き終えた、と大きく伸びをするナルト。
 その背後から突然。
「過去形なの?」
 予期せぬ声がした。
「うわあっ」
 驚いたナルトはそのまま椅子ごとひっくり返りそうになる。
 それを支えてくれたのは声の主、カカシだった。
「ねえ、ナルト?もう過去形になっちゃった訳?」
 中途半端な角度で椅子を支えたまま、カカシはナルトの顔を覗き込む。
「カ、カカシ先生っ!?」
 ナルトは目を丸くしてカカシを見つめた。
「もう俺の事、嫌いになっちゃった?」
 カカシは椅子を起こして、ナルトの正面に回る。
「な、何言ってるんだってばよ?俺の事嫌いなのはカカシ先生じゃん」
 ナルトは泣きそうな顔でカカシを見た。
 唯一見えるカカシの右目が、少し細められる。
「俺はナルトの事、嫌いだなんて言ってなーいよ?」
「だって、苦痛って言ったってばよ」
 カカシの言葉に、ナルトは口を尖らせた。
 あの時、カカシは確かに苦痛だと言った筈だ。
 嫌い以外にどう取ればいいというのか。
「苦痛とは言ったけどね、それは嫌いって事じゃないのよ?」
 カカシはナルトを宥めるようにゆっくりと言う。
「じゃあ何?」
「言ったら、死ぬなんて考えない?」
「……うん」
「あのね、俺はナルトの事がだ〜〜〜い好きなの」
「は?」
 予想外の言葉に、ナルトは思わず間抜けな声をあげた。
「で、ナルトも俺の事好きでしょ。でもね、ナルトは俺みたいな薄汚れた大人を好きになっちゃいけないんだよ。その方がナルトのためだと思ってあんな事言った訳」
「何それっ!どこから苦痛が出てくんのさ」
「毎日が理性の総動員で、かなり苦痛だったのよ」
「訳わかんないってばよ」
 カカシの言う事が理解できず、ナルトは眉をしかめる。
「わかんなくてもいいよ。俺がナルトを好きだって事だけわかってくれれば」
「先生が、俺を好き?」
「好きだよ」
「ほんとに?」
「ほんとだよ」
「……イルカ先生の言った通りだったってばよ」
 ナルトは小さな声でつぶやいた。
 それをカカシが聞き逃す筈もなく。
「イルカ先生が何だって?」
 わずかに頬を引きつらせてナルトを見た。
「昨日イルカ先生のとこに行ったんだってばよ。カカシ先生に言われた事を考えたら、死ぬしかないって思って、それを言ったんだ。そしたらイルカ先生が賭けをしようって」
「賭け?」
「うん。俺にイショを書きなさいって。もしも書いてる間にカカシ先生が来て、俺が死ぬのを止めるように言ったらイルカ先生の勝ちで、カカシ先生が来なかったら俺の勝ちだって。イルカ先生が勝ったら死んじゃダメって。カカシ先生は絶対に俺の事、嫌ってないからって言ったってばよ」
「そうか……」
 ナルトの言葉を聞いて、カカシは納得した。
 イルカは上手い具合にナルトに賭けを持ちかけ、すぐに死なないように時間を稼いだのだろう。
 カカシがナルトをどう思っているのか、勘付いた上でだ。
「賭けはイルカ先生の勝ちだってばよ」
「そうだね。でもそれで良かったでしょ?」
「うん。カカシ先生、俺もカカシ先生の事、好きでいい?過去形じゃなくってさ、ずっと好きなままでもいい?」
「当たり前デショ」
「嬉しいってばよ!」
 カカシににっこりと笑われて、ナルトも満面の笑みを浮かべる。
「た・だ・し」
「ただし?」
「先生の“好き”は、邪ダヨ?ナルトを汚しちゃうかも知んないヨ?」
「ヨコシマ?それってどういう事?」
「ん〜、こういう事」
 カカシは口布を素早く下ろして顔を近付けると、きょとんと首を傾げているナルトの唇を奪った。
 途端、ナルトは目を真ん丸くして硬直する。
 カカシはそんなナルトを見て“可愛いねえ”なんて思っていた。
「な、な、な、何するんだってばよ!?」
 ようやく我に返ったナルトが顔を真っ赤にして怒鳴ると。
「好きな相手にキスしたいのは当然の事デショ?それともナルトは先生とこういう事はしたくない?気持ち悪い?」
「うっ……気持ち悪くはなかったってばよ」
「ま、今はそれで我慢してあげるよ。そのうちキスだけじゃなくってあーんな事やこーんな事もしちゃうからね?」
 口布を元に戻しながら、カカシは楽しげにそう言った。
「なっ……」
 邪の意味をようやく理解して、ナルトは絶句してしまう。
 その顔は茹蛸のように真っ赤だ。
「死なれちゃたまんないから、これ以上は我慢しなーいよ?」
 そんなナルトを見て、カカシはいつまでも楽しげに笑っていた。
 先に任務に向かった2人の事をカカシが思い出すのは3時間後。

 終。



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